中小企業助成金を活用した業務改善の実現

 2018.02.15  RPAチャンネル編集部

少子高齢化による労働人口減少や、その結果の人材不足による影響で、特に中小企業での人材確保は年々難しくなっています。さらに、最低賃金の引き上げなどにより労働力確保のためのコストの上昇傾向によって、なおのこと人材確保に課題を持つ企業が多くなってきているのではないでしょうか。このような状況に対する施策も検討することが急務です。

皆さんは、中小企業を対象とした「業務改善助成金」をご存知でしょうか?これは厚生労働省が推進する、「中小企業の生産性向上」と「事業場内での最低賃金の引上げ」を目的にした助成金制度です。

今回は、人材の確保が難しくなった中小企業に向けて、業務改善を実現するための助成金についてご紹介します。

業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。生産性向上のための設備投資やサービスの利用などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。

引用:厚生労働省「最低賃金引上げ支援 中小企業向け 業務改善助成金」 

つまり「最低賃金を引き上げる上で設備投資するのであれば、その一部を負担します」という助成金制度です。この制度は平成28年度(2016年)に制度拡充され、現在では「50万円~200万円」の助成金を条件に応じて支給できます。支給対象者は事業場内最低賃金が時給1,000円未満の中小企業および小規模事業者です。

助成金支給の要件

≪1.賃金引上計画≫
事業場内最低賃金を一定額 以上引き上げる計画を立て、就業規則等に規定すること。

≪2.業務改善計画≫
<生産性向上のための設備投資などの計画を立てること。

 

≪3.引上げ後の賃金額・設備投資費用支払い≫
<引上げ後の賃金額が事業場内最低賃金になる、および生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと。

≪4.不交付事由≫
<解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと。

 

以上が業務改善助成金を支給されるための要件です。ちなみに次の項目に該当する場合は支給対象にはなりません。

  • 単なる経費削減のための経費
  • 職場環境を改善するための経費
  • 通常の事業活動に伴う経費

「職場環境の改善」と「業務改善」は類似している部分があるため、違いを明確にしておかないと支給されない可能性があるので注意しましょう。

業務改善助成金の助成額一覧

業務改善助成金の助成額は5つのコースに分かれています。助成額は主に事業場内最低賃金の引上げ額に応じて変わり、各コースの助成上限額は次の通りです。

≪業務改善助成金5つのコース≫

事業場内

最低賃金引上げ額

助成率

助成の上限額

助成対象事業場

30円以上

7/10

常時使用する労働者数が企業全体で30人以下の事業場は3/4

生産性条件を満たした場合には3/4

50万円

事業場内最低賃金が750円未満の事業場

40円以上

70万円

事業場内最低賃金が800円未満の事業場

60円以上

100万円

事業場内最低賃金が1,000円未満の事業場

90円以上

150万円

事業場内最低賃金が800円以上1,000円未満の事業場

120円以上

200万円

たとえば従業員数が20名で現在の事業場内最低賃金が800円未満の場合、最低賃金引上げ計画によって40円以上引き上げを行えば、上限額70万円の助成金が支給できます。業務改善のためのかかる費用が90万円だとすれば、助成額は67万5,000円です。

ちなみに支給された助成金は、機器・設備導入に加えて教育訓練や経営コンサルティングにも使用できます。

業務改善助成金で生産性向上に成功した事例

実際に業務改善助成金を支給したことで、生産性向上に成功した中小企業および小規模事業者の事例を紹介します。

≪A社事例..生産時間50%削減、生産量300%向上≫

事業種:乳製品製造業、従業員数:10~19名、最低賃金引上げ額:平均48円

A社は生産ラインの生産能力に限界があり、大量受注時には従業員が残業して増産に対応。そこで、助成金を活用して大型高性能クッキングマシン(中古)を導入。生産時間の短縮や生産量の増加にともない、受注状況に応じて生産ライン担当者を梱包業務などの他の作業へ割り当てるといった、柔軟な人員配置が可能となった。

この結果、生産時間を50%短縮して生産性向上に成功。生産量は300%増加した。

≪B社事例.顧客の安全性・満足度・回転率を向上≫

事業種:飲食店、従業員数:10~19名、最低賃金引上げ額:平均110円

店舗の客席レイアウトの都合上、従業員が顧客の背後から配膳しており、配膳に時間がかかるとともにさまざまな危険を伴っていた。そこで助成金を活用し、店舗の客席レイアウトを変更する工事を実施。配膳にかかる時間が短縮した分、回転率が向上するとともに、細やかな顧客サービスの提供が可能になり、顧客満足度が向上した。

この結果、配膳時間を従来の1/2に短縮し、安全性や顧客満足度の向上につながった。

≪C社事例.情報共有力と利用者へのサービス品質向上≫

事業種:放課後等デイサービス、従業員数:5~9名、最低賃金引上げ額:88円

従来の情報共有ツールが紙媒体であったため従業員の作業が煩雑になり、情報共有に労力を要していた。そこで助成金を活用し、クラウド型業務管理システムを導入。紙で行っていた利用者との情報共有について、スマートフォンで入力・閲覧が可能なサイトを設置したことで、利用者から担当者への連絡、担当者から利用者への連絡、申請内容、スケジュール、請求金額等を、瞬時に従業員全体で共有することが容易になった。

この結果、従業員間の情報共有にかかる時間短縮および負担短縮になり生産性が向上。それにより利用者へのサービス品質が向上した。

参考:厚生労働省「~最低賃金の引上げに向けて~生産性向上の事例集」

業務改善助成金を活用して、人材不足や経営課題解消を

生産性向上によってなぜ賃金引上げが可能になるかというと、生産性向上がそのまま企業の収益拡大に直結するためです。従って、賃金を引き上げても収益拡大によって、企業は従来以上に利益を確保することになります。さらに賃金が上がることで、従業員のモチベーションも上がり、「正のスパイラル」を生むことで継続的な生産性向上が見込めます。そうした「正のスパイラル」に着目したのがこの業務改善助成金であり、中小企業は積極的に活用すべき制度です。

助成金の対象はITツールなども含まれており、たとえば昨今導入事例が増えている「RPA (Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)」によって、バックオフィスを中心とした定型業務を自動化し、業務改善を図るなどの手段もあります。このようなツールの導入も要件を満たせば助成金の対象になる場合がありますので、ぜひご各様をご検討ください。

現在平成29年度の受付が終了していますが、平成30年度予算にてどのような助成金が準備されるかぜひ最新情報をご確認ください。(年度によっては要件や助成額が大きく変更される場合もありますのでご注意ください)

皆さんも、国や都道府県の助成金をうまく活用して、今ある人材不足や経営課題を解消してみてはいかがでしょうか?

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