ついに成立!働き方改革法の概要

 2018.07.29  RPAチャンネル編集部

2018年6月29日、安倍晋三内閣総理大臣の私的諮問機関である「働き方改革実現会議」が提出した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が可決・成立しました。

働き方改革は「一億総活躍社会」に向けた取り組みの一つであり、老若男女を問わず誰もが活躍できる社会に向けて、ワークスタイルの変革やワークライフバランスを整えるためのものです。これを推進する働き方改革は2016年8月3日に設置され、働き方改革大臣として厚生労働大臣も務めた加藤勝信氏が任命されています。

働き方改革実現会議は内閣総理大臣と働き方改革大臣を含め、関係官僚と有識者15人から構成され、10回以上にわたって働き方改革の実現へ向けた議論が交わされてきました。今回可決・成立した働き方改革関連法案はその一つの集大成とも言えるでしょう。

ここでは、働き方関連法案を理解するための3つのポイントをご紹介します。

ポイント①罰則付きの残業時間規制

労働基準法では、1日8時間以上、1週間に40時間以上の労働を禁止しています。これを超えて労働させることは原則的にできず、1日8時間以上や1週間に40時間以上労働させる場合は残業代を支払わなければなりません。残業代は基本給与の1.25倍です。

では、残業時間の規制はどれくらいか?原則として残業は1ヵ月45時間未満、1年では360時間未満という規制があります。この時間を超えて残業させることは法令違反となり罰則の対象となります。

しかし、例外処置が存在することでこの残業時間規制がほとんど意味を持たなかったのが実情です。企業は労使との協定により規制以上の残業を課せることができます。これがいわゆる「36(サブロク)協定」です。36協定は日本の残業問題を複雑にしている原因の一つであり、長時間労働によって過労死したという事例も少なからずあります。

そうした「長時間労働の是正」は働き方改革実現会議が兼ねてより取り組んできた事案であり、この度罰則付きで残業時間を規制するという法案も盛り込まれています。

働き方改革関連法案では「1ヵ月45時間、1年間360時間」という残業時間規制が明確化され、これを超えて労働させた場合は罰則があるため法的拘束力を持つようになりました。繁忙期などにおいて規制を超えて労働する必要がある場合でも、45時間を超えて労働できるのは1年で6ヵ月までとし、1年間の上限は720時間となります。さらにこれに加えて単月では100時間未満、複数月では平均80時間未満という規制もあります。

この「100時間未満」というのは過労死の認定ラインとされています。すべての労働者にとって十分な規制ではないかもしれませんが、これまで残業時間が実質的に青天井だった労働者からすれば大きな変化でしょう。

ポイント②労働時間規制を無くす高度プロフェッショナル制度

長時間労働の是正の一策として可決・成立した残業時間規制とは反対に、労働時間の規制を無くすという制度も働き方改革関連法案に盛り込まれています。それが「高度プロフェッショナル制度」です。これは年収1,075万円以上の高いスキルを持つ従業員を、労働時間の規制から外すという制度になります。一般的には研究職やコンサルタント、アナリストなど専門性と年収が高い職種が該当します。

この制度については賛否両論あり、「柔軟な働き方を実現できる」という見解もあれば「実質的な給与削減策になる」と批判の声もあります。というのも、この年収1,075万円というラインが低いのではないか?と懸念されているのです。

大企業の場合、通勤手当の上限が高く新幹線通勤をしている人も少なくありません。厚生労働省では高度プロフェッショナル制度で規定している年収ラインの中には、通勤手当も含まれるという見解を示しているので、新幹線通勤をしている人は実質的な年収はラインに達していなくても制度に該当してしまう可能性があります。

この制度のもう一つのポイントは該当職種です。たとえば経団連の榊原定征前会長は記者会見で高度プロフェッショナルの適用職種の例として、マーケティングを挙げています。

欧米諸国と比べて日本ではマーケティングという職種が確立していません。多くの企業では、営業部門が活動の一環としてマーケティングを実施しています。あるいは、企業のマーケティング部門は特別なスキルを持っているという人は少なく、他から異動してきた人材が多いでしょう。

そうした場合、営業など専門職ではない人達も高度プロフェッショナルに該当してしまう可能性があります。

ポイント③労働者待遇に大きな変化をもたらす「同一労働、同一賃金」

3つ目のポイントは、同じ労働をしている人に対して同じ賃金を支払おうという「同一労働、同一賃金」制度です。

残業時間規制は大企業が2019年4月から、中小企業が2020年4月から適用されます。高度プロフェッショナル制度に関しては、企業規模を問わず2019年4月から適用されます。一方で「同一労働、同一賃金」に関しては、大企業が2020年4月、中小企業が2021年4月に適用されます。

この制度では正規社員や非正規社員のなどの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決めるという制度です。勤続年数や成果および能力が同じならば、給料を同額にする必要があり、さらに休暇や教育制度といって待遇面も同じにしなければなりません。

「同一労働、同一賃金」は不合理な労働格差を生まないための制度です。日本では、人件費削減や雇用の調整弁として派遣社員や契約社員などの非正規社員が使われてきました。しかし、正社員と同じ(時にはそれ以上)の労働内容にかかわらず大きな格差があります。ただし、無条件ですべての待遇が同じになるわけではありません。

もしも企業経営に余裕が無く、人件費拡大が図れないという場合は正規社員の待遇を抑えて、可能な限り待遇面を同じにする必要性があるかもしれません。

企業が今後取るべき対応は?

残業時間の規制への対応について企業が費やせる時間は大企業ならばあと9ヵ月、中小企業ならあと1年9カ月です。高度プロフェッショナル制度に関しては企業規模を問わず残り9か月となっています。

これらの法案適用において、企業が取るべき行動とは何か?その一つが「労働時間削減」への取り組みでしょう。残業時間の規制も高度プロフェッショナル制度も「同一労働、同一賃金」も、いずれも現在の労働時間を削減し、法案適用に対応するための環境を整えることが大切でしょう。

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大手銀行ではすでに年間数万単位の労働時間削減に成功し、中小企業でも年間数千単位の労働時間削減は難しくありません。働き方改革関連法案が可決・成立したことで、日本の働き方は転換期を迎えます。適切な対応をして、新しいワークスタイルの実現を目指しましょう。

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