失敗事例にみるRPA導入のポイント

 2018.03.22  RPAチャンネル編集部

最近、デジタルレイバー(仮想知的労働者)と呼ばれるソフトウェアロボット技術を用いて業務の自動化による生産性の向上や労働時間の削減に注目が集まっています。それを実現するツールがRPA (Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)です。今後は人工知能(AI)と組み合わせることでより高度な処理にも対応できるようになることも期待されています。

そのような背景で急速に浸透しつつあるRPAですが、これはユーザーが開発した処理フローに従って通常は人が行うパソコン上の操作を自動化するロボットソフトウェアです。

RPAの特長は従来のマクロなどの自動化ツールと違って複数のアプリケーションやシステムにまたがった自動化ができることです。たとえばExcelのマクロを使用すれば、データ集計やグラフ化などあらゆる作業を自動化できます。しかし、それはExcelなどOfficeドキュメント内に限定した話であり、その集計結果をWebアプリケーションに入力するなどということは、Webアプリケーション側のAPIなどに依存していました。その他の自動化ツールも同様に、その範囲が限定的であったり、APIを駆使してプログラムを開発しなければいけなかったという特徴を持ちます。

これに対し、RPAはユーザーの操作の視点で自動化するため、特別なプログラミングの知識も不要であるうえ、様々なアプリケーションにまたがって処理を自動化できるために注目を集めています。より実際の業務処理の範囲に沿った自動化ができるからです。

このように注目され、市場が成長しているRPAですが、すべてがうまくいっているわけではありません。やりかたによっては失敗という状況になるケースも存在します。むしろ、RPAというデジタルレイバーが普及期に入った今だからこそ、多くの失敗事例が発生しているかもしれません。

本稿ではそんなRPA失敗事例をもとに、導入のポイントについて探っていきましょう。

失敗事例1.RPAへの過剰な期待からくる失敗

本稿を読まれている方の多くは何かしらのシーンでRPAについて耳にし、その概要や導入方法について調べているのではないかと思います。そんな皆さんに問いたいのは「RPAにどんな効果を期待していますか?」ということです。RPAに寄せる過剰な期待から失敗につながるケースが多々あります。

新たな「働き方改革の一手」としても注目されるRPAに対し期待値が高くなることは至極当然なことです。実際に、RPAはその期待値に多くの場合応えられるでしょう。しかし過剰な期待は禁物です。なぜなら、RPAは従来導入されてきた「システム」とは違い、あくまで「デジタルレイバー」という人材という立ち位置にあるからです。

RPAをシステムと捉えて、業務自体が大きく改善することを期待すると間違ってしまいます。RPAはシステム構築や導入とは違い、あくまでユーザーが現在やっている処理や作業をなぞる形で自動化するものです。

RPAをデジタルレイバーと捉えるべき理由がここです。RPAはシステム環境を変えるソフトウェアではなく、既存のシステムを「使う側」のソフトウェアなのです。そして、同僚として仕事を継続的に教えてゆくことで力を発揮します。

従ってRPAによって業務自体が大きく改善するという期待を持ってしまうと期待外れな結果となってしまうのです。

失敗事例2.業務プロセスを可視化しないまま適用し誤作動が連発

RPAはロボットソフトウェアなので期待通りに動作しないと思われることがあります。しかし、その原因のほとんどはRPAというツールではなく、仕事を教える立場の開発者にあります。

RPAの処理内容は、あくまで開発者が設計したものです。しかし、実際の処理の担当者が明文化されていない判断を独自でやっていたりすることもよくあります。本来は属人的な処理は好ましくありませんが、しかしそのような個別の対応によってうまく業務が回っているということもあるでしょう。

そのようなケースを十分に認識しないで定型的な処理フローを作成してしまうと、いつもと違う処理結果が出てきてしまうことがあります。しかしこれはRPAの責任ではありません。担当者の経験は重要ですが、自動化にとっては難しい要素になってしまいます。担当者からのヒアリングなどは慎重に行い、対象業務の選定や実装を行いましょう。

また、処理の変更対応も重要です。これは人同士のコミュニケーションミスでも同じことが起こりえますが、処理内容の変更や使用しているシステムの変更などは、迅速にRPAに仕えてあげないといけません。RPAは自分で判断できませんので、変更を反映させないと間違った処理をし続けてしまいます。そのため、RPAの処理は一度作成して終わりではなく、迅速に修正対応し続けられる体制が必要です。

失敗事例3.いきなり大規模な展開でプロジェクトがとん挫する

RPA導入の定石は「スモールスタート」、つまり「小さく始めて大きく育てる」というスタンスが基本です。「年間8,000時間の労働生産性向上に成功」など大規模な成功事例もありますが、いきなりその規模で運用開始したわけではなく、それもスモールスタートで運用を開始して徐々に適用範囲を拡大していった結果です。

なぜRPAで大規模導入のアプローチが禁物かというと、各組織の業務に即した導入が必要だからです。RPA自体は標準的なツールですが、使える環境や使い方はそれぞれ異なります。

また、日本でRPAが注目され出したのはごく最近のことなので、多くの企業にとってRPA導入は初めてです。そのため、システム面と業務面の双方からすり合わせを行い、その組織の中のベストプラクティスを確立してゆくことが重要です。また、運用の体制なども導入後には非常に重要ですが、それにかかわる人を育成するのにも時間がかかるため、少しずつ広げてゆくことが結果的には近道になるのです。

着実に活用を広げてゆくには、最初に大きな風呂敷を広げるのではなく、まずは適用範囲を限定して小さく始め、少しずつ拡大してゆくという方法を取らないと失敗してしまう可能性が非常に高くなります。

3つの失敗事例から見るRPA導入のポイント

以上の失敗事例をもとに考えるRPA導入のポイントは「RPAをシステムではなく人材と捉える」「過剰な期待は持たない」「適用する業務プロセスを見極める」「継続的に変更できるような体制を作る」「小さく始めて大きく育てる」の5つです。

RPAを導入する際は、大規模なシステム導入とは異なることを認識して過剰な期待はせず、継続的に教育(改良)を施していくことでその効果を最大化していくという考えで運用しましょう。RPAはシステムではなくまさに人材です。そうした認識を強く持つために、キャラクター化するのも一つの方法です。

RPAを適用する業務は必ず可視化できるものを選びます。さらに、可視化するだけでなく、システム運用にかかわる関係者全員の共通認識のもと、業務プロセスを改めて定義しましょう。そうすれば、システム変更や業務内容変更が加えられる際も、RPAへの影響を考慮した行動が取れます。

最後のスモールスタートは重要です。どんなに実績の高い導入パートナーの支援があっても、小さく始めて大きく育てるのがRPA導入成功の秘訣です。焦ることはありません。RPAの活用方法は1,200通り以上もあるといわれており、徐々に適用範囲を拡大していけば必ず高い労働生産性向上と費用対効果がもたらされます。

社内人材だけでの運用は不安という場合は、導入パートナーの支援を積極的に利用して、効果の高いRPAの活用を実現しましょう。

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