労働時間を短縮するために必要なITツールとは?

 2018.02.16  RPAチャンネル編集部

働き方改革の一環として「長時間労働の抑制」に取り組む企業が増えています。働き方改革が進められる中、長時間労働による様々な弊害が顕在化し、社会問題化してきたからです。しかしながら、これまで「残業ありき」で運用されてきた業務がそう簡単に変わるわけではありません。

そのため、労働時間短縮に成功している企業はまだ多くはないのが実情でしょう。そこにはいくつかの要因があります。

たとえば残業代の問題です。労働時間を短縮するにあたって社員の給料を上げる企業は非常に稀です。従って社員から見れば、これまで残業代込みで生活していたのが、労働時間を短縮すると減給されることと同じになってしまいます。そのため、なんとかして残業を「したい」と思っている人が少なからずいるということです。

一方で、帰りたくても帰れないという人もいます。自分の仕事が終わっていても、上司や同僚が残業していると帰りづらいという意識の問題や、そもそも残業を前提にして業務量やリソースが割り当てられているため、仕事が多すぎるということもあるでしょう。

労働時間を短縮するといっても、それに応じてただちに業務量が減るわけではありません。社員の負担は次第に増え、結局は残業をしなければ業務が回らなくなります。とはいえ、昨今の人材不足の状況やコストの問題もあり、単純に人を増員することも現実的ではないでしょう。

そもそも、労働時間短縮が必要な理由とは?

日本は先進国の中でも非常に生産性が低い国です。OECD(経済協力開発機構)が行った調査によれば、日本人の平均年間労働時間は1,719時間。それに対してドイツの平均年間ロ労働時間は1,371時間、フランスは1,482時間、デンマークは1,475時間です。ドイツと比較すると日本人は43.5日間も多く働いていることになります。

一方、世界経済トップの米国はというと、平均労働時間は1,790時間で日本とほぼ同じ労働時間です。しかし、「なんだ、日本人はただの働き者じゃないか」と安心してはいけません。日本人一人あたりのGDP(1時間あたりの国内総生産)で見れば、米国よりも23.4ドル低い39.5ドルだからです。さらに、ドイツのGDPは59.5ドル、フランスは60.8ドル、デンマークは63.4ドルと軒並み日本よりも高い数値を持っています。

日本は世界的に見てもかなり生産性が低い国ということがわかります。

引用:OECD(経済協力開発機構)「Average annual hours actually worked per worke」

労働時間短縮が必要な理由の一つがこの生産性の低さです。日本企業の多くは、生産性を向上するための労働時間を短縮し、相対的に生産性を高めようとしています。

なぜ日本人は労働時間が長い?

日本人の労働時間が長く、かつ生産性が低い理由はいくつかあります。

未だに根付く労働時間至上主義

日本がバブル経済に沸いた1980年代後半から1990年代前半、多くの企業が「社員数と労働時間を増やせば業績が上がる」と信じていました。その頃に「企業戦士」や「猛烈社員」という言葉が生まれるほど、社員はすべてを犠牲にしてその時間を会社に捧げるもの、という意識が強くありました。

その後バブル経済が崩壊し、会社への忠誠心は昔ほどではなくなったものの、管理職の多くはバブル経済期に「企業戦士」や「猛烈社員」と呼ばれてきた人々です。従って社員を評価するにあたって労働時間の長さを評価する風潮が残っている部分もあるでしょう。

社員もそれを理解しているからこそ、残業を拒むことなく自分の評価を高めようとします。こうした「労働時間至上主義」は未だに日本経済に根付いており、生産性を低下させる大きな要因となっています。

サイロ化されたIT環境

日本では古くからOA業務のIT化が進んできました。OA業務とは主にパソコンを使った事務作業であり、部署ごとに様々なOA業務があります。このOA業務を効率良く行うために導入されたのが、部門特化型のITシステムです。財務会計システムや人事管理システム、営業支援システムなど部門ごとに特化されたITシステムは、一見多大な恩恵をもたらしたかのように思えます。

実際にそれらのITシステムによって効率化された作業は多いでしょう。しかしそれ以上に、「ITシステムのサイロ化」という問題は巨大でした。サイロ化とは、企業のある部門が他の部門と情報共有や連携などをせずに、独自に業務を遂行し、それぞれが孤立した状態を表す言葉です。

参考:「IT用語辞典」

部門ごとに特化したITシステムは組織と業務のサイロ化を急速に進めることとなりましたが、実際のビジネスは逆に新たな価値を提供するために部門間の連携が重要になってきました。サイロ化したシステムと組織と、横断的な連携が必要なサービスの増加の間で、従業員の負担は増える一方の状況が生まれている現実もあります。

このように、日本人の労働時間が長くかつ生産性が低い理由は、日本企業の風習とIT環境にその原因の多くがあるのです。

失敗しない労働時間短縮のために

では、どのように労働時間の短縮に取り組めばいいのでしょうか。それは「時間短縮」ありきで考えるのではなく、「生産性向上」を起点に考えることです。100の労働時間で100の生産性を得ている場合、労働時間を50まで下げると生産性も50まで低下します。これでは単に労働時間を短縮しただけで、企業としても社員としても成長にもつながりません。いかにして、50や70の時間で100のアウトプットを出せるのかという視点がなければ、労働時間の短縮は絵に描いた餅になり、隠れ残業を増やすだけの結果になってしまいます。

生産性を向上するためには

生産性を上げるというと、工場では最新の生産設備を導入すれば達成できるかもしれないですが、事務作業ではそうもいきません。しかし、近い概念でのアプローチは可能です。それは効率化ツールの導入です。たとえばRPA (Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)は、パソコン上の操作をすべて自動化できるロボットソフトウェアです。パソコンで作業している内容のうち、ルールが決まっている作業を自動化して生産性を高めることが可能です。

たとえば資料一つ作成するにも、様々なシステムやファイルにあるデータを参照して転記を繰り返すような作業が発生したりしていないでしょうか。このような定型的な作業は意外と多く、時間も取られます。さらに人がやることでミスが発生し、手戻りややり直しということも発生します。

このような機械的な作業を自動化するだけで、全体の労働時間の何割かは確実に削減できるのではないでしょうか。これまでにも同様のツールはありましたが、対象とするアプリケーションが限定的で、業務全体の効率を上げるには至りませんでした。しかし、RPAはOfficeアプリケーションやWebアプリケーションなど、複数の種類のアプリケーションをまたいだ自動化も可能なので、部門ごとに大幅な業務効率化が実現するでしょう。サイロ化されたIT環境のつなぎを人が行っていた部分を自動化するだけでも、生産性を下げている一つの要因を取り除くことができます。

もちろん長時間労働の要因はこれだけではないですが、従業員へのインセンティブと組み合わせながら、現実的な長時間労働の抑制に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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